Mustapha Skandrani / Istikhbars and Improvisations LP

ムスタファ・スカンドラニ『イスティクバルと即興』[EM1096LP]

アルジェリアの音楽家、ムスタファ・スカンドラニによるアンダルシア古典ピアノ独奏名盤、アラビア版「ゴルトベルク変奏曲」こと『イスティクバルと即興』(1965)。

なんでまたエムで古典ピアノ?と訝しむなかれ。実がこれが実は相当な孤高・異端作なのである。アンダルシア古典音楽でピアノは末席、このスカンドラニが開拓したも同然の演奏法で、なぜ異端かといえばこの人以前のアンダルシア音楽のコンサートでピアノ独奏はありえず、「イスティクバル」(アンダルシア宮廷音楽の様式のひとつ)をピアノでやるなど誰も考えつかなかった(当時物議をかもした)。
アルジェリアの古典音楽はスペインのアラブ・イスラム王朝が起源のアンダルシア宮廷音楽とトルコの古典音楽が混同し、西洋/アフリカ先住民/ユダヤ系の影響も受け、東西文化の統合が特徴。「イスティクバル」は宮廷音楽の組曲様式「ナウバ(またはヌーヴァ)」の前奏曲であり、幾つかの型(モード)がある。(※詳しくは解説を参照)
‥‥と、そんな小難しいことも理解に必要かもしれないが、それよりも、オリエント/西洋/アフリカが鍵盤上で優雅に交差するさま、その世界が最大の魅力だ。和声に依らず単一の声部で構成されるアラビア音楽の特徴により、ピアノからつむぎ出される音は一本の繊細な線のようで、それが東西世界を行き来するかように動き回る。バッハの「ゴルトベルク変奏曲」もそう遠いものには感じられない。

  • Mode: Raml Maya & Mode: Mezmoum

EM Records / EM1096LP
Vinyl : NEW
Sleeve : NEW

  • 2,200円(税込)

管理番号 2277